国産材・県産材でつくる木の住まいの設計 FRONTdesign

国産材・県産材でつくる木の住まいを設計しています。 奈良県生駒市

地域の歴史的建造物保存活用の研修

 住まいの設計 「木の家づくり」   奈良県生駒市 一級建築士事務所 FRONTdesign  

9月から半年間、地域の歴史的建造物保存活用の為の研修を受けることになり、今月2回分が終わりました。

1回目は文化財についての講義。
日本の文化財保護の流れや、現代の保存や修復の方法の方向性について、そして法隆寺や唐招提寺の修復のことなど、具体的なお話をお聞きしました。
社寺仏閣のような歴史的建造物は過去にも定期的に修復が重ねられ、その時代の技術や流行が取り入れて修復されてきたため、創建当時とは異なる姿になっているものが多いのですが、現代の修復は基本的には創建当時の姿に戻す方向性で行われています。
解体の際に古文書などの参考になる資料が出てくれば、それを読み解きながら進められることもあるそうです。

講習風景
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唐招提寺金堂の鴟尾(しび)。

右と左は時代の違うものですが、ひれの部分の割の角度が異なります。
右の鴟尾の方が新しい時代につくられた物ですが
ひれの間隔や放射状の方向が規則的になっています。





木造の伝統工法や伝統技法について、古代から近代和風まで時代の変遷と共にどのように進化してきたか、たくさんの有名な建築物の断面や図を見ながら解説していただきました。

これは唐招提寺金堂の断面図。
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規矩術についてのお話もありました。
反り屋根の軒の規矩の決まり事などは、とても奥の深い世界でよく勉強しないと理解できませんが
規矩術が発展し、日本建築のカタチを確立してきたことがよくわかりました。
日常の住宅設計の仕事でお寺のような反り屋根にする事は無いのですが、規矩術の話を聞いていると建築的にとても面白く思いました。
(次の住宅設計は反り屋根か?)


2日目は、法隆寺近くの龍田界隈を実際に歩いて、建物調査の方法を勉強をしました。

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元庄屋さんの建物。建築時期は明治時代で築120‐130年とのこと。


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元銀行(南都銀行の前身)の建物。
大正時代に、大和郡山からここに移築されたそうです。
鉄の格子が入っています。



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こちらは元薬問屋さんで、元禄年間に建てられたらしいとのことでした。
もう築後300年になるでしょうか。
大変綺麗に保存されています。


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この酒屋さんは文政年間(江戸後期)の建物です。

蔵や茶室も含め6棟が国の有形登録文化財に指定されています。




町並み調査のあとは、文化庁から来られた講師の方から文化財の活用について講義を受けました。
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講義を受けながら、いま身近で起ころうとしている事を思い出しました。
古いものを残すというのはなかなか大変な事ですが、しょーがないねと傍観している姿勢ではいけないと思い
ひとつ、いえ、ふたつのことについて心に決め事をしました。
残すべきかどうかの価値基準はそのものの本質にあり、言わばそれが全てだと思います。
今回のこの研修は、その価値観を養うものでもあると思います。
頑張りたいと思います。
by frontdesign | 2012-09-24 19:21 | 建物探訪&散歩 | Trackback | Comments(0)

by yuriko iwaki