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”大工一代” 平田雅哉

先日、大先輩から平田雅哉さんの話をお聞きして、"大工一代"と"匠たちの名旅館"を読んでみました。

大工一代は平田棟梁の半生記で(1961年出版)大変面白いと言う事で評判になり、1964年には森繁久弥主演の映画(大工太平記)にもなりました。
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大阪の数奇屋大工で、何より、自らが設計者。昼は大工として働き、夜はひたすら図面を描く日々。趣味の彫刻も素晴らしく。
大変アクの強い方で、負けず嫌いで喧嘩っ早く、仕事一筋で何事も徹底的、とにかく豪快でかつ人情が厚い。
(まさに映画の主人公にぴったりの方です。)


9才上の村野藤吾さんが初めて平田氏に対面した時の印象として
長い間の修練に耐えて自我を通してきた大棟梁の面影があった。その気骨は、金と権威に自らを捨てぬ不屈の魂が躍如として、寄らば切らんの構えが感ぜられた。私は棟梁の向こう側に座った。瞬間、一言も言わないうちからこの勝負は私が負けたと思った。
と言葉を残されています。

戦前、戦中戦後の激動の時代の話も多く、今とは全く違う社会背景ですが、建築業界のことはもとより現代がその上に成り立つ今であることを深く感じ入りました。



匠たちの名旅館は、筆者が平田氏の作品に興味を持たれるところから始まり、数々の作品が紹介されています。
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現代において実際に棟梁を知る稀有な人として、芦原温泉つるやの女将(お姐さん)の言葉で語られた章の後半は、大工一代を読んですっかり馴染みのある棟梁の、その後のことや違った側面を知り非常に感動しました。


改めて本棚の作品集を開いてみると、品がよく静かな建築写真の中に平田棟梁の魂を感じます。

図面も。大変美しい図面を描かれます。
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「建築は風呂敷には包まれん。出来上がりが気に入らんからといって、引っさげて持ち帰るわけにはいかん」と言うのが口癖だったとのこと。
誠を貫き妥協を許さぬ、極めて真摯な姿勢。


関西に多く残る平田雅哉さんの仕事を見に行きたいと思います。



 住まいの設計 「木の家づくり」 奈良県生駒市 一級建築士事務所 FRONTdesign  
by frontdesign | 2014-03-06 22:11 | 設計について考える | Trackback | Comments(0)

by yuriko iwaki