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国産材・県産材でつくる木の住まいを設計しています。 奈良県生駒市

鵤工舎 前田世貴さん講演会 と 槍鉋

先週の日曜日、奈良朱雀高校で鵤工舎の前田世貴さんの講演会がありました。
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前田さんは朱雀高校の前身の奈良工業高校のご出身で、卒業と同時に鵤工舎に入られ現在は奈良斑鳩作業所で棟梁を務めておられます。

西岡棟梁と小川棟梁のお話、前田さんが堂宮大工を志されたきっかけや修行時代のお話、初めて棟梁を任された時のことなど、たくさんの話をお聞きすることができました。
嘘のない仕事をしなければならない、良い作品をつくるより先に良い刃物を(良い刃物はうそをつかない)、伝承とは弟子に伝え教えることではなく、古の工人の魂のこもった仕事を読み取り対話すること(建物に信念を込めることで後世に伝わる)、刃物を砥ぐことと道具を扱えることの大切さ、道具は知恵の塊であり伝承であること、初めて弟子に鉋を触らせる時は一番いい鉋を触らせ本物を教える、電動工具などの便利な道具は、刃物をちゃんと扱えるようになってこそちゃんと扱える(便利な道具にばかり頼ると知恵を鈍らせる)、精神を研ぎ澄ませる、見込みのある子は他に行き場のない子、棟梁の力は束ねる能力、親方を乗り越える、そして、新築が出来ないものに改修や復元は出来ない、等々、
短時間でしたが内容の濃いお話で感動しました。
若い時に棟梁をさせて、現場を全て任せるそうです。考えて考えて、考え抜き、魂を込めて力を合わせて作り上げる。20代でお堂や棟の棟梁を任されるのはどんな気持ちでしょう。

最後に道具を使った実演をしてくださいました。

槍鉋(やりがんな)
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削りかすがクルクルと丸まります。
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生徒さんも体験。
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台鉋は二枚刃と一枚刃で桧を削ってくださいました。
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よく切れる刃物で木を削ると、木の細胞の断面が綺麗に切れるので、平滑でツヤがあり美しく、いつまでも表面がこば立つことがなく木が長持ちするそうです。その辺が電動鉋との違いです。


槍鉋は、台鉋よりもずっと古くからある道具ですが、現在の一般の普請ではあまり使われることはありません。
刃先は普通の槍鉋と、斗栱(ときょう) などを作る時に使う逆反りの刃があります。


槍鉋の仕上げについて。
平城京大極殿。(2010年復原)
この建物の木部表面加工は全て槍鉋で仕上げられており丹土が塗られています。
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この柱の表面の波を打つような感じが槍鉋の仕上げです。
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by frontdesign | 2015-08-03 18:01 | 和室と日本建築  | Trackback | Comments(0)

by yuriko iwaki