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アジアの建築とモンゴルの文化遺産 フォーラム

先週末「アジア文化遺産講演会・奈良モンゴル国際交流フォーラム」が奈良で開催され、聴講してきました。
アジア文化遺産講演会は、建築家・国士舘大学教授の国広ジョージ氏のご講演でした。ネパールのバクタプールの街で多く見られるパティ(街の広場などにある縁台のある縁側のような建物)を調査された話や、2015年に起こったネパール地震の被害とその後の復興復旧状況などネパールの話をはじめとし、北京の故宮と胡同の近年の変化の状況、アンコールワット修復工事と日本の関わり、香港、スマトラ島メダン、上海ワイタン、福建省アモイ等、各地での文化遺産の修復・再生事例、市民や関わる人たちの意識、民間資金による再生のことなど、数多くの写真を拝見しながら話をお聞きしました。文化財の修復だけでなく、古く価値のある建物が見直されて各国で盛んに再生行われている状況がよく分かりました。大変充実した内容で勉強になりました。

講演会の後、奈良モンゴル国際交流フォーラムが始まりました。モンゴルからは3名の方がご登壇され、通訳を交えながら進行されました。
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ガンダン寺の僧侶の方による説明。
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モンゴルではロシアと同じキリル文字が使われています。1924年にソビエトの全面的支援のもと中華民国からモンゴル人民共和国として独立し、その後1941年にソビエトの統制のもとキリル文字が使われるようになったそうです。独立直後から1990年までは社会主義体制で、1937年には2万人の僧侶が粛清され1000もの寺院が壊されたとのこと。このガンダン寺は社会主義政権のもと、1990年までは倉庫として使われていたとのことでした。
1990年に社会主義が終焉を迎え、モンゴル国になりました。宗教の自由も認められるようになり、寺院を文化遺産として修復保存復元をする動きが高まり、近年では民族マスタープランを策定し国家事業として文化財保護を行うようになってきたそうです。長年の空白時期があったため技術の伝承が途絶えてしまい、経験や人材不足が大きな課題とのことでした。現在奈良で興福寺中金堂の復元工事をされている瀧川社寺建築さんは、アマルバヤスガラント寺の修復の工事の時に3年の間モンゴルの職人さんと一緒に工事をされ、技術や経験の伝承をされたとのことでした。瀧川社寺建築の國樹彰氏も登壇され、技術や経験の伝承の重要性について話をされました。


政変により辿った建築物の数奇な運命に衝撃を受けましたが、同じ木造文化の国であることに親近感を覚え、再生のための手法や技術交流が行われていることは素晴らしいことだと思いました。



会場では、モンゴル仏教寺院の修復・復元の様子をパネルで展示されていました
モンゴルは中国の北に位置し日本から3000km離れていますが、仏教国ということもあり寺院建築では大変近い工法です。
図面で見ると、日本の建物とはちがい屋根勾配が少し緩いものもありますが、少雨の気候とのことでした。
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隅棟に走獣、軒先の滴水瓦など、かなり中国風様式の寺院です。走獣は、故宮をはじめとして中国の建築でよく見かけます。数が多いほど位が高いようです。敵水瓦は、北京や韓国の古い建築物で多く見られる特徴的な瓦です。日本では、豊臣秀吉が朝鮮出兵の際に朝鮮の瓦職人を連れ帰り築城の際に使われていたようで、今も城建築で見かけます。
しびや鳥衾のようなものもありますが、厚みが薄く立ち上がった形状てす。
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こちらはモンゴルらしい寺院。修復後の姿。
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懇親会では歌の交流もありました。大陸的な情緒を感じる歌声をお聴きしていると、モンゴルの悠々とした草原の風景が浮かび胸が熱くなりました。
思い出に残る楽しい宴になりました。有難うございました。
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by frontdesign | 2018-01-15 08:00 | 建物探訪&散歩 | Trackback | Comments(0)

by yuriko iwaki