第18回吉野の森見学バスツアー
2017年 11月 23日
奈良をつなぐ家づくりの会恒例の吉野の森見学バスツアー。今回で18回目になります。
奈良県産材を使い職人の手で家づくりをすることを主旨に、木材生産者、製材所等の材木を扱う事業者、工務店、設計事務所が集まり、奈良をつなぐ家づくりの会を結成して今年で5年目になりますが、主なイベントはこのバスツアーで、幹事の泉谷さん(泉谷木材商店)が毎回企画とツアーコンダクターをして下さっています。
いつもは朝から吉野の山を巡って林業のことを学び、最後に里に下りて製材所見学や実際に建てられた建物を見学するのですが、今回は最初に製材所を見学してから山に入りました。
泉谷木材商店さんでの見学の様子。
製材のことを教えて頂きました。製材は目利きがとても大切で、人の知恵が働いています。
適材適所、木をとても大切にされている泉谷さんです。
ここ桜井にはたくさんの製材所がありますが、国産材の低迷により隆盛時に比べると今は随分と少なくなっているそうです。
桜井に製材所が集まっている理由を今回初めてお聞きしました。昔の桜井駅はJRの終点駅だったそうで、駅から製材所まで支線を引いていたところもあったそうです。吉野で伐られた材木は桜井まで運ばれ、桜井で製材をして貨物で日本全国に発送していたとのこと。当時は大変活気のある町だったそうです。今は大型トラックで全国に運ばれています。
桜井を発ち、吉野郡川上村へ。この季節は山が紅葉しています。杉や桧の木は常緑ですので紅葉しません。紅葉しているところは杉桧が植林されていないところです。地面が岩盤のところは植林が出来ないため、主に広葉樹の雑木が生えています。
その昔、山伏がこれらの木から生薬を作り、京の都に売りに行ってたそうです。胃腸薬の陀羅尼助も吉野産です。
このあたりは吉野川が蛇行しています。
大滝ダム。毎回この横を通って川上村の植林地に行きます。
雨のあとでダム湖は満水でした。
このダムが完成して灌水試験をした時に、対岸の白屋地区というところが地滑りを起こして大問題になり、当時は毎日のようにテレビのニュースで放送されていました。満水のダム湖を見ると当時のことを思い出します。
川上村高原地区でバスを降り、山守さんが丹精されている山に入れて頂きました。
斜面の地道を登ります。吉野は日本の林業地の中で最も急峻な斜面地だそうです。
50年生の桧の森。
林業の施業のことや間伐の選木のことなど教えて頂きました。
そのあと250年生の森へ。
吉野林業は密植、多間伐、長伐期が特徴で、間伐が繰り返される中でこのような完成された森になります。
そのあと、吉野杉を使って酒づくりをされている美吉野酒造さんへ。
酵母菌を使わずに麹と大峰山系から流れる水と杉の木桶での酒づくりを60年ぶりに復活され、完全なコントロールの下で画一化した酒づくりではなく、自然の環境下で自然に寄せた酒づくりの話をお聞きしました。毎年少しずつ違う風味のお酒が出来るそうですが、自然に寄せるものには遊び(余裕)があり、地酒ならではの奥深い味わいになるそうです。
麹室での発酵も含め、自然下での杉の調湿作用の素晴らしさを教えていただきました。
杜氏の橋本様。
麹室も少しの間開けて見せて頂きました。灘のお酒の博物館で見学したことがありますが、実際に使われている室を見せて頂くのは初めてです。ムンとする湿度と温度で、生物の匂いがしました
事務所も杉の内装。最近改装されたとのこと。
酒樽の材料は、木のどの部分を使うか、その理由も含めてお話下さいました。
使われているお米の話も。
原料のお米もとても大切で、農とも密接に繋がっているのですね。
美吉野酒造さんは吉野川沿いに位置しています。
昔は近くに橋がなかったので、吉野川の向こう岸へは渡し船で往来していたそうです。その時の発着場。目印は両岸の柳の木。
今回のツアーのテーマは
「つながりを考える」
でしたが、
木を活かす酒づくりの話をお聞きしながら、私たちがしている家づくりと共通するものを感じました。
また、ひとと木つながり、農や食のつながりも感じました。食は脳が欲するものと身体が欲するものが違うように、住環境も同じことが言えるように思います。ハレの食事とケの食事があるようにハレの場とケ(日常)の場があり、後者は自然体であることが良いように思います。
今回のツアーにご参加頂いた皆様、
お世話になった皆様、有難うございました。
次回のツアーは3月に開催予定です。
是非、ご参加ください!
by frontdesign
| 2017-11-23 22:48
| 奈良をつなぐ家づくりの会
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