”奈良町 西村邸” 町家再生計画
2018年 05月 29日
昨年の秋より改修計画を進めておりました奈良町西村邸。間口四間半で奥行きの深い敷地に主屋、辰巳蔵、茶室棟、離れ棟、納屋棟の5つの建物と4つの庭があり、敷地全体として改修を行う計画です。主屋は大正4年の築造、間口2間半の本2階建てで、1階はトオリニワの土間が通り、ミセ、ダイドコ、オクと1列に並び、2階はオモテ、ナカノマ、オクと並ぶ1列3室型の典型的な町家形態で、大きな改修はされておらず原型に近い状態です。主屋東側には辰巳蔵の形を残すつし二階の建物が隣接しています。瓦は比較的近年に葺き替えをされていて、住まわれながら手入れをされていらっしゃるご様子が伺えます。 主屋は名栗格子に囲まれています。この装置は鹿よけのためのもののようで、奈良公園に近い奈良町の町家で時々見られるものです。こちらは傷みもありますので、同様の形で再生することになりました。 辰巳蔵は、現在は電動シャッターのついた駐車スペースになっています。壁天井の仕上げを解体をしてみると、過去に何度か改修がされた痕跡が見られました。シャッターを撤去して伝統的意匠に戻す方向で改修計画をしておりますが、改修の痕跡を見る中で建築当初の形体を確認することが出来なかったため、全面に格子の入っていたと推測できる時期の意匠に倣ってまとめることになりました。今回の計画地は奈良市歴史的風致維持向上計画における重点地区内で、歴史的風致形成建造物の指定を念頭に改修を行う為、奈良市の奈良町にぎわい課と教育委員会文化財課の担当の方が調査に来られ、後日に建物についての考察結果をお示しいただきました。奈良町の歴史的建築物の特徴や、同じ奈良町内でも地域による特性があることなど、話をお聞きすることができてとても有意義でした。 駐車場のシャッター部分は増築されており、その手前の5寸角の柱には荒格子の貫と思われる貫穴や格子の内側に入っていたと思われる建具のあと(鴨居溝)が見つかりました。材の寸法や位置を採寸。 道路側ファサードの改修後のイメージです。現在の黒漆喰の壁はそのまま黒漆喰で塗りなおします。シャッターから荒格子にすると建物の印象も大きく変わりそうです。袖うだつの一部も再生します。お施主様はこの地に住まわれながら、宿泊のできる奈良町の町家「西村邸」として活用されるご予定です。代々丁寧に住まわれてこられた建物を、傷みのある部分はきちんと修理して町家の良さをそのまま生かす改修をご希望頂いています。 この敷地の大きな特徴は4つのお庭があることです。どの庭にもそれぞれ植栽と石があり、丹精されていた様子が伺えます。 茶室の裏側にも露地があります。遊び心のある空間です。 主屋と離れ棟の間の庭には、大きな井戸とお稲荷さんがあります。暮らしの庭。 奥の納屋は、ざっくりとした納屋建築の面白みのある空間です。 奥行きの長い敷地は、奥へ行けば行くほどプライベート性が高くなります。内を通ったり再び外へ出たりと空間に変化があり、敷地全体がひとつの町のような感じがしてとても面白く思います。 ”木の住まいの設計”一級建築士事務所 FRONTdesign 岩城由里子
国産材・県産材を使って木の家づくりをしている設計事務所です。yiwaki@kcn.ne.jp奈良県生駒市北田原町1052-2
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| 2018-05-29 07:10
| 町家改修 奈良町 西村邸
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