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丈夫な畳

先日、土佐のイ草づくりの話をお聞きする機会がありました。

今の日本で使われている畳表は8割が中国産で、国産は2割程度です。
そもそもなぜ中国産の畳ができたかというと、高度経済成長期時代に増え続ける畳の需要に国産のイ草農家が対応できず、イ草の苗を中国に運んで栽培して日本に輸出するようになったからで、日本のお国事情で中国に産地が拡大したわけです。その後、住宅事情の変化により畳の需要が激減し、価格の安い中国産がシェアを占めるようになりました。

中国でのイ草栽培は日本に比べると農薬の規制がゆるく、また製造された畳表は輸送中にカビが生えないように防カビ材も多く使用されている為シックハウスの原因にもなります。通常の設計時には熊本産の畳表を指定しておりますが、今回話をお聞きしてイ草生産農家の使われるイ草の品種で畳表の強さが違うことを知りました。
日本では熊本、広島、岡山、高知などが古くからイ草の産地です。高知のイ草農家は最盛期は2500軒以上あったところ現在は2軒になったそうです。そのうちの1軒の野村和仁さんは、昭和40年ごろから続く品種「せとなみ」と「岡山3号」にこだわられて現在もイ草の生産をされているそうです。見た目の良さや気候変動下における栽培のしやすさなどで次々と品種改良がされても、丈夫で長持ちする畳表はこの2種に勝るものはないそうで、野村さんの生産する畳表は全国で生産されている畳表の中でも他の追随を許さない耐久性を誇るそうです。
これらの品種は、イ草の命ともいえる灯心(い草の中に詰まっているスポンジ状のもの)がしっかりとしているため、製造される畳表はクッション性があり表面が傷みにくく、毛羽立ちも起こしにくいそうです。そして美しい黄金色になり20年以上も長持ちするそうです。
経年変化で黄金色になり、ささくれなくふっくらとした目の詰まった畳表がとても美しいです。

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今回、この野村さんの生産される畳表を扱っておられるじゃぱかるさんの話をお聞きしました。


じゃぱかるさんは、日本人のアイデンティティに深くかかわってきた畳文化とそれを支えてきたイ草農家の背景を多くの方に知ってもらい、そのうえで消費者が日本のイ草で織られた畳に価値を感じ、選び、使って頂くことで、イ草産業と畳文化が残って行けばという想いで活動をされています。この話をお聞きして、私たちが活動している奈良をつなぐ家づくりの会の主旨に似ているなと思い親近感を覚えました。

畳業界ではまだ産地偽装もあるそうで、野村さんのつくられる本物の土佐表を間違いなく消費者に届けたいとのことで野村さんの畳を直売されるようになったそうです。

野村さんのつくられる土佐表の良さを知るためにも、和ござとして販売されている1畳分のごさを買ってみました。
事務所に敷いておりますので、ご興味のお有りの方はぜひ見に来てください。

吉野杉の床の上に土佐表の和ござです。

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by frontdesign | 2019-02-26 07:01 | 和室と日本建築  | Trackback | Comments(0)

奈良町町家再生計画 納屋工事2

納屋の工事が進んでおり、工事半ばです。
外壁の焼杉板張りの施工も終わりました。納屋の外壁の仕上げは、土壁+板張りなども検討しましたが、屋根のケラバの出があまり長くないので風雨にさらされるため、土壁では若干不安が残り、全面板張りがメンテナンスもし易いため焼杉板張りの仕上げにしました。

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施工前。
右半分は鉄板が張られていて、左半分は土壁の上にモルタル塗り、仕上げは全体に浮いていました。

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鉄板を取ったところ。浮いているところや土壁の欠損部分は補修し、土壁がこれ以上落ちないように壁止まりを設置して、外壁を仕上げていただきました。

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これで、また数十年は建物を傷めずに長持ちさせることが出来ます。
焼杉板は張った時から徐々に経年変化があり、年月とともに素朴な風合いになります。当初は黒くて少しクールなイメージですが、納屋でも大丈夫。納屋らしくなります。
庭の土の部分が建物より上がっており壁に土がかかっていたのも下げていただき、建物として健全な状態になりました。足元の石の部分は焼杉板を石の形状に光らしていただいています。(光るとは、石や木など相手の形に合わせて木を削ることです。)

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柱の下部の傷んだ部分は簡単に根継をしていただきました。こちらも石に合わせて光っていただいています。
古い建物の改修は、このような仕事のできる職人さん無しでは修理することが出来ません。これはとても大事なことで、若い大工さんにもこのような仕事が出来るように育ってもらわないと、古い建物に住み継ぐ選択が困難なことになってしまいます。

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今日は奈良町にぎわい課へ、歴史的風致形成建造物のことで打ち合わせに行ってきました。
早く着いたので奈良町の表通り裏通りを散策。それぞれの通りで町の趣も異なり、他の通りを見てここ花園町を見るのもここを理解する助けになります。
西村邸前の通り。周辺は現代の建物に建て替えられているところが多いのですが、道幅が狭く向かいの借家町家と対になっており、ここから見ると良い景色です。


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この通りはつし二階の建物が多いです。

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こちらもつし二階。
道幅も、通りによって広いところと狭いところなどいろいろです。車の通れない曲がりくねった路地もあります。


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古い町並みを整備するときに「時代劇のセットのようにならないように」というのが、考え方の一つとしてあります。
どうも、周囲と合わせすぎると生活感のないセットのような町並みになってしまうように思います。全国各地の整備された伝統的な町で、このような事象に陥っているところも少なくなく、そのことを痛烈な批判をされている方もおられ、各建物を設計する設計者のマナーの問題ともいわれています。設計者としてはなかなか難しいテーマですが、単体を設計する場合でも建築物だけに注視せずに古いまち全体の営みを知らなければなぁと思います。建物も通りも人間と同じで、それぞれにそれぞれの特徴があるのが面白く、古びてくると味わいも深まります。雑多に連続することで人間らしさというか、生活らしさが出てくるようにも思います。


ある建物の前に消火用のバケツが置かれていました。
奈良町は都市部の密集地で都市計画上の防火・準防火地域ですので、建築確認を要する新築や増築や用途変更をする際には、ある基準の上で防火の措置を講じないといけません。確認が必要な行為が行われる際に現行法に合った建物に更新していくことで、密集地における防火・延焼をふせぐことが可能になるのですが、一方では歴史的風致形成も重んじられており、都市計画法がつくられるずっと以前より町並みを形成していた古い建物を残していこうという取り組みも進んでいます。奈良市では奈良町独自の条例の作成も始まるそうです。
都市計画の防火の措置としては相反する方向性で法整備。新しい建物と古い建物の混在する町は、延焼の恐れも残しながら町を形成することになりますので、現実問題としては自治会など町ぐるみの防火活動が一番具体的な防災になるように思います。建物の前にこのような消化用バケツが置かれているだけで、防災意識が高まるように思います。

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by frontdesign | 2019-02-25 16:00 | 町家改修 奈良町 西村邸 | Trackback | Comments(0)

学園前 喫茶と雑貨のお店 進捗状況1

学園前の喫茶と雑貨のお店”アンジュール”
工事が始まっています。築60年の木造平屋建ての建物で、以前は診療所として使われていました。


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診療所の扉は木製扉に入れ替えることになりました。
右側は住宅の玄関。住宅部分は数年前に改修の設計をさせていただきました。

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解体が終わりスケルトンになりました。
庭に面する左半分が喫茶スペースになります。真ん中に壁を作り、右側は住宅の居室として今回改修する部分です。


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仕上げ材を解体するといろいろなことがわかります。ふさがれていた壁に地窓があったりと、何度かの改修の痕跡がありました。
蟻害がなく、一安心です。
60年前の建築で、小屋組みの梁材も丸太が多くつかわれています。

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元は二間続きの和室で、天井や建具なども良い仕事がされていたようです。

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まずは住宅部分の一部屋を仕上げて、それから店舗の工事に移ります。間仕切り壁の下地が出来てきました。

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学園前駅のすぐ北側で、周りにはビルが林立しております。ビル街の中でぽつんと平屋の建物と広いお庭があり、とても贅沢な空間です。
古き良き学園前がそのまま残っているような場で、駅北部が開発されたころから住んでいた学園前民としてはとても懐かしくなります。

住宅部分の南の庭にも大きな木がたくさんあり、都会のオアシスのようなところです。もしかしたら渡り鳥の飛来地にもなっているかもしれません。こちら側は大きくなり過ぎた木を伐採して整理しましたが、これから新たに樹木を植えます。

喫茶ではお庭を眺めながらゆっくりお茶を飲んでいただける空間になると思います。


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直近の打ち合わせでは、お店に置く家具類の打ち合わせをさせていただきました。
お店のメニューにされる、店主手作りのガトーショコラを頂きました。身体にやさしいお味です。添加物や保存料の入っていない自然の味が本当の美味しさですね。
どうぞお楽しみに。

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by frontdesign | 2019-02-25 14:06 | 改修 学園前 喫茶・雑貨のお店 | Trackback | Comments(0)

Smileの家 進捗状況1 基礎工事

基礎の工事が始まりました。
遣り方をすると建物の敷地に占める割合がわかるようになります。

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設計時に地盤調査をしたところ、支持層が全体的に深度2メートルの深さにあった為、地盤改良をする事になりました。2メートルと言うと深いように思いますが、比較的浅い層です。また、全体として同じ深度に支持層があることも安心材料です。

敷地の奥に農業用水路が通っていることもあり、土壌汚染の無い砕石による改良としました。

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この砕石は吉野の山の石です。柱状に掘りそこに少しずつ砕石を流し込み、締め固めながら地表まで砕石を入れます。セメント改良と違い、水を必要としません。

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掘った土は土場に運ばれ、空になったダンプに砕石を積んで戻って来ます。なかなか効率の良いシステムです。工期は2日かかりました。
この界隈は古代からの住居跡のある地域で、埋蔵文化財発掘の届出が必要な地域ですが、建築物の規模が小さく、地盤改良の地層も比較的浅いため、発掘調査や立会は不要とのことで慎重工事の判定が出ました。

とは言うものの、何か出てきてないかなと土を調べてみましたが、それらしきものは見当たりませんでした。

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地盤改良工事が終わると捨てコンを打って、配筋をします。

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立ち上がりまでコンクリートを打ち、型枠が取られました。

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ここまで来ると中を歩きまわれるようになり、建物のボリュームが想像出来るようになります。
一階が広い二世帯住宅です。
南の日当たりが良い敷地ですので主な部屋は南向きに配置していますが、北側の隣地の植栽も借景として取り込みたく、ダイニングや浴室は景色優先で設計しました。
今年の春はまだ工事中ですので、室内からの見え具合も確認したく思います。







by frontdesign | 2019-02-17 00:10 | 新築 smileの家 | Trackback | Comments(0)

奈良町西村邸 町家再生計画 納屋工事

納屋の工事が始まりました。
納屋は傷みのある部分の修理と構造補強をして、建物として今後長持ちさせるための改修をします。

隣地との境界側の壁は、隣地の地盤がこちらより高く盛り土されているため、柱の足元や土壁下部が痛んでいました。
隣地側からの補修工事が出来ないため、内側に補強壁を作ることにしました。

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柱を受ける基礎を作ります。
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大工さんが仮の受け梁を準備して下さり、木を当てて傾きを見ながら位置決めをしました。水平に当てると水平材が傾いて見えるので、なかなか難しいところです。
土間にも傾斜がありますが、足元は水平になるように基準レベルと施工の方法も検討しました。

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補強壁の設置中。
柱のつなぎを入れるのに、貫を通すか相欠きにするかのどちらかの方法でと考えていたのですが、現場の状況を見ながら大工さんたちと打ち合わせをして、最終的には相欠きにすることになりました。

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新しい桁で3本の梁の荷重も受け、しっかりしたと思います。
壁は元の壁を修理して仕上げ、新たな壁の構造体は現しにします。通気できるので傷みにくく、傷んだときにも簡単に根継ぎや補修を簡単にすることが出来ます。

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北の奥庭はの出入口の庇を修理するのに壁を取ると、室内がとても明るくなりました。
お寺が正面に見えて良い景色です。
お庭やさんも入られて、奥庭も整備中です。

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次に取り掛かる主屋。少しずつ解体して頂いています。
通り庭は天井が張られていましたが、天井を撤去すると塞がれていたところの土壁がまだ綺麗で、このままで仕上げることにしました。
一部ホコリが付いていますが、ハケで簡単に落とせます。

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キッチンを置かれていた壁はタイルの壁に改修されていましたが、タイルの壁を取ると棚が出てきました。

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お施主様が子どもの頃には、この棚にお鍋などを置いておられたとのことです。
この棚類も復活します。

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by frontdesign | 2019-02-08 02:17 | 町家改修 奈良町 西村邸 | Trackback | Comments(0)

国産材・県産材でつくる木の住まいを設計しています。 奈良県生駒市


by yuriko iwaki
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